対談インタビュー

歯科医師と歯科技工士で
患者様のために高め合う

院長:初めての出会いは2015年でしたね。

松尾:そうでした。デジタルに興味があり、院長の夢に共感して求人募集に応募したんです。

院長:ちょうど悩んでいたんですよ。開業以来、一時期は6~7件の技工所さんとお取引しながら「丸い歯をつくる」「低めにつくる」などそれぞれの特徴も考えて患者さんに合うものを求めていたんです。その後、やっぱり金属から離れたいとセレックを導入したのですが、診療もあり限られた時間で機械との対話だけでその力を生かすには限界を感じていたのです。いくら最新の機器でも、やはり技工では私たちは技工士の足元にも及びません。そこで、募集を出したのが経緯でした。

松尾:模型相手でなく、患者様の口の中を直接みることができる。これは嬉しかったですね。以前も「これは見た方がいい」というときは立ち会いに行っていたのですが、今ではいつでも見に行けるし、削るところから「もう少し削って」なんて言えますから(笑)。

院長:おたがいに一番いい環境で、長持ちする、つけやすい…といったことをクリアできて、「患者さんにとって一番いいように」という同じ想いでやれるのは私も嬉しいです。最初は院内のことから始めてもらったのですが、すべて受け止めてくれるので夢が広がって、技工所としてクリニックに隣接して独立いただく形になったんです。

歯科=予防医学の入り口
メタルフリーを広めたい

松尾:日本全国にメタルフリーが広まっていけば…というのは、何度も語り合いましたね。クリニックでも技工所でも、「完全に金属はやめよう」と決めたのが、2年前でした。

院長:これは私の念願でもありました。開業して20年、医師になって27年。最初は金属しか選択肢がなく、いくらきちんとあわせても、次第に伸びたり割れたりして、自分が治療した歯を抜く、やりかえるたびにやりきれない気持ちでした。そのうち金属によるさまざまな弊害も明らかになって、医療に関わる者として、よくないと分かっているものを入れることは治療ではないと思ったのです。

松尾:決めてからは一度も金属を買っていないし、今後も買うことはありません。世の中にはメタルフリーを掲げながら、実際には金属を扱う技工所もありますが、私たちは、完全なメタルフリーを実践しています。

院長:世界中をみても、金属を入れるのは日本くらいです。金から銀に変わって約60年、いまだに変わらない状況に「自分たちから動いて変えていこう」と話したんですよね。歯科は予防医学の入り口ともいわれ、年々、口内環境と全身疾患の関連などもあきらかになってきています。デンタルフィット(技工所)は、健康寿命を守りたいクリニックを支える技工所として、日本全国の同じ想いを抱くクリニックと、その輪を広げてほしいです。

高齢者もネット検索の時代
自費診療でも患者数は増加

松尾:完全メタルフリーを決めるまでは院長と悩みましたが、クリニックでも患者さんの数は減っていないんですよね。

院長:そうですね。むしろそれを希望してご来院くださる方もいます。先日は70代の男性が「ネットでセレックを検索して来た」といわれて、驚きました。

松尾:説明中は何も言われなかったので、お支払いのときに受付から呼ばれて、なんだろうと思って行ったら「俺は、これを待っとったんだ」と、とても喜ばれて嬉しかったです。

院長:レストランで味に満足や感動をしたらシェフを呼ぶように、最後に松尾先生を呼んで「ありがとう」と声を掛けてくださる方は多いですよね。完全に金属をやめると決めたときから、 ホームページや院内にもご案内を書いて患者様にご説明もしましたが、変わらずに患者様は来てくださるので。逆に、求められていたことを感じる日々です。

個々のクリニックだけでは
できないことを支えていく

松尾:おかげさまで、技工所には北九州エリアでもトップクラスの機械が揃いました。最初に私が希望した設備も入れることができ、つくるだけでなく抗菌までしてお届けできるのは、これからやりがいを感じます。

院長:なかなかそこまで、個々のクリニックで対応することは難しい部分がありますから。ただ、予防医学研究所をめざす私たちとしては、目にみえないものまで、そこに患者さんのためにならない可能性があるものは、先にとめようという考えですね。

松尾:コーティングはしても、抗菌まで機械を入れて行うところは少ないと思います。そこを一個いくらという形でも、出していただければ受けますというのがスタンスです。抗菌する前と後では、触っただけで違いますし、患者様も「いいね」と喜ばれます。もし自分の親が入れ歯になったら、私は必ずこれをやるといえます。

院長:自分が入れたいもの、家族に入れさせたいもの、という視点は、おたがいに共通していますね。審美も大切ですが、患者さんの最終的な満足というのは、健康に尽きます。限られた寿命の中で、健康に最大寿命までもっていけたら、患者さんが、健康で一生を終えてくれたら、それが一人、二人、…と増えていくことが一番幸せを感じる瞬間ですね。

松尾:デジタルはまだまだこれからなので「依頼したいがスキャナーがない」という医院様には型をとって模型を送っていただくかたちでも対応ができます。「すでにセレックを導入しているが使いこなせていない」という医院様であれば遠隔操作で設計して、あとはボタンを押せば削れるというところまでサポートもできます。少しでも興味を持っていただけたら、気軽にお問い合わせやご相談をいただけたらと思います。

院長:ドクターの視点、技工士の視点、それぞれの連携で、日本全国で、患者さんにとってよりよい歯科医療が提供できると楽しみですね。いつかは各地の技工士の皆様との情報交換の場や、未来を担う技工士さんの育成の場にもなれば、と期待しています。